監訳『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』

チーム開発

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継続的監訳

昨年は、『C#実践開発手法 ー デザインパターンと  SOLID 原則によるアジャイルなコーディング』(日経BP社)の監訳を担当させていただきました。

そして今年は、

今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』(日経BP社)

を監訳させていただきました。

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書籍『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』
書籍『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』

 

今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント

今回は、この書籍についてご紹介です。

原書は、『Agile Project Management with Kanban』です。著者は、Eric Brechner です。Microsoft で Xbox プラットフォームの開発を指揮している人で、大規模でのウォーターフォール開発、スクラムでの開発、カンバンでの開発を経験している人です。

ご存じのとおり、Microsoft での開発は、とても規模も大きくなる傾向があります。本書のなかでも触れていますが、Xbox と一言でいっても、本体、組み込み済みのアプリ、サードパーティ向けのゲームSDK、xbox.com のサービスなど多岐に渡るわけです。本書では、著者が経験したカンバンへの道筋について、実践可能な手順と、Xbox での事例を交えて詳しく解説しています。

ただ、この書籍、非常に薄いです。薄いのはもちろん中身ではなく、ページ数です。約150ページほどに様々な状況の現場でのカンバンの適用についてのノウハウが記されています。

 

章立て

全9章で構成されています。

  • 第1章 経営陣の同意を得る
  • 第2章 カンバンのクイックスタートガイド
  • 第3章 納期を守る
  • 第4章 ウォーターフォールからの適応
  • 第5章 スクラムからの進化
  • 第6章 コンポーネント、アプリケーション、サービスのデプロイメント
  • 第7章 大規模な組織でカンバンを使用する
  • 第8章 サステインドエンジニアリング
  • 第9章 さらなる方策とカンバンを超えて

監訳者あとがきにも記させていただいたのですが、第4章、第5章、第7章、第8章はみなさんの現場に応じて読み飛ばしすることができるように構成されています。

 

各章の紹介

日本のよくあるプロジェクトだと、第4章のウォーターフォールからの適応や、第8章 サステインドエンジニアリングは、必読となるでしょう。ウォーターフォールは言うに及ばずでしょう。サステインドエンジニアリングは、要するに保守開発です。保守開発のような状況でのカンバン活用について記されています。また、単にカンバンを使いましょうでないのが本書の特徴でもあります。例えば、保守開発するならば、どういう組織体や、チーム編成が考えられるか、そこでどうコンセンサスを取っていくべきか?そこでカンバンをどう活用するのかといったことが簡潔ながら的確に解説されています。

スクラムを実践されている場合は、第5章 スクラムからの進化をご覧ください。スクラムとカンバンのロール、イベントの違いを明示してくれています。

第7章 大規模な組織でカンバンを使用する も読み飛ばし可能な章ですが、日本の現場を考えると読んでおいたほうがいいでしょう。これは、決して大規模と決めつけてはならない貴重な情報が詰まっています。要は組織が複雑だったり、関係者が複雑だったりする場合でのカンバンの活用について記されています。実に日本的な事情にマッチしているのではないでしょうか。

さてそれ以外の章はというとやはり必読です。

第1章 経営陣の同意を得る では、カンバンの適応について経営陣に今までのやり方を変えるという稟議の書き方からスタートしています。そうです。この書籍を買うとカンバンを導入するための稟議書の書き方も得ることができるわけです。

実は、単にい上層部におうかがいを立てるだけではなく、カンバンをより客観的に知るきっかけをまず冒頭の第1章で示しているのが本書のよいところです。

その上で、第2章 カンバンのクイックスタート ガイド でカンバンの始め方を解説しています。この章には、他の章を読みながらいつでも立ち戻れるように構成されています。

実は、この書籍。カンバンと銘打っているが、「顧客に価値を提供し続ける」には?を解説しているのです。したがって、第3章 納期を守る第6章 コンポーネント、アプリケーション、サービスのデプロイメント は、この顧客に価値を提供し続ける上でのコツが詰まっています。

第3章は、納期を守るというタイトルですが、計画づくりと関係者との協調について書かれています。第6章は、あらゆるタイプのデプロイメントとそれをカンバンでどうマネージするとどうよいことが起こるのかについて力説されています。

そして第9章 でカンバンの背景や理論の裏づけについて書かれています。

実にユニークな構成であり、かつ的確に読者の現場を変えるチカラが本書にはあります。

 

カンバンの適応力

本書でも「カンバンは、特別な用語を用いていない」「カンバンは、プロセス(ステップ)を変えずに実践できる」「カンバンでは特別なロールは必要ない」とあります。

カンバンは今までのやり方の交通整理であり、それをプル型にしたものになります。なので、ウォーターフォールからでも、スクラムからでも、もちろんあなたの自社プロセスでも移行していくことができます。また、「一個流し」であり、各ステップ(分析とか、実装とか、検証とかです)ごとに完了の定義を定め、ステップに「実施中」と「完了」列を設けるというやり方で、品質とリテラシーのコントロールもしています。

本書では、ウォーターフォールからの移行についてこのあたりを詳しく説明しています。スクラムからの移行は、スクラムでのロールやイベントがいかに削減できるか、特別なことをする必要がなくなるか、スプリントのタイムボックスにより、フィードバックサイクルが回るようにするカンバンの特徴を解説しています。

カンバンを解説することで、日頃の開発での課題への解決策も示しています。例えば、要求の獲得方法やそれらの要件化、トリアージ、具体化してマネージしやすいタスク分解を行う方法なども第3章 納期を守るで解説しています。

動くソフトウェアが出来上がった時に実践できるための理論と実践方法については、第6章 コンポーネント、アプリケーション、サービスのデプロイメントで詳しく解説しています。継続的インテグレーションとカンバンの連携による効果や、継続的デプロイメント、パブリッシングなどコンポーネントやアプリ、Webサイトのコンテンツなどでのカンバンの活用についても具体的に示しています。先に述べたように Xbox プラットフォームは、これらの集合体なので彼らはいろいろな経験を積んでいるのですが、それを解説してくれています。

そして、全体を通じて述べられているのは、カンバンにより利害関係者との意思疎通、共同作業がより円滑になるという点です。その中では、別のチームはカンバンに移行できず、ウォーターフォールやスクラム、その他のやり方をしている場合もあるでしょう。そういうよくある状況(Xbox チームも全てがカンバンなわけではなく、スクラムが主流で、パートナーチームだとウォーターフォールもあるそうです)でのコミュニケーションの仕方や対応方法も具体的に示してくれています。

 

技術より基礎のチカラ

技術の進化は目まぐるしいわけですが、それはツールやテクノロジーだけのチカラでは顧客に価値として提供されることはありません。その時代、そのビジネス、そのアプリやサービスに合ったやり方は常に模索、改善していくしかありません。華やかなテクノロジーに酔いしれて、そちらを見ることは決していけないことではありませんが、目指す社会、ビジネス、自己実現のためにやり方を見直すことは必要でしょう。それは、基礎的な知力と体力になるはずです。本書はその基礎のチカラを育む、見つめ直すよいきっかけになると思います。

Microsoft の人間が執筆した書籍ですが、Microsoft マンセーな書籍ではありません。また、Microsoft 技術の話でもありません。ただ、前職からの経験上も Microsoft に近い開発者、開発現場の方は、もっともっと技術だけでなく基礎的な現場力を見つめ直してもらいたいです (Microsoftの中の人も読んでもらいたいですし、こういうのをしっかり訴求してもらいたいです)。

 

フォローアップ

まだ正式発表(?)できませんが、監訳にあたり、著者の Eric にいろいろ教わり、議論したことがたくさんあります。そんな中ででてきた図や考え方などもこのブログでフォローアップしていきたいと思います。例えば、要求をトリアージし、バックログ化するにあたってのテクニックを図示するなど本書で文字でしか示していなかった部分を図示したものなど取り上げていきたいと思います。

また、本書では、Word での提案文書、Excel での WIP制限の計算、タスク見積もりなどのツールもダウンロードにて提供しています。これらについても近々なんらかの発表できればと思います。それ以外にも。。。いろいろあります。

また、本書の読書会などコミュニティや社内で行う場合などは遠慮なくご連絡ください。お手伝いできる範囲でお手伝いさせていただきます。

 

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